明日から出来る!介護現場の残業を減らす働き方
介護業界における残業の実態とは?
「介護業界とは、サービス残業が多いのではないか?」とよく言われることがあります。今回は、「きつい」「汚い」「危険」の3Kと言われていたのは過去であるということを、様々な調査結果をベースに確認していきたいと思います。
まずはじめに、介護職員の残業状況を調べてみました。1週間の残業時間は、正規職員では残業なしが56.3%です。非正規職員は、残業なしが65.8%という結果となっており、実は残業時間は少ないです。また、月間の残業時間を他業界と比べてみました。3Kで比較される建設業は12.8時間となっており、なんと、医療・福祉は5.2時間と半分以下の残業時間ということが分りました。
それはおかしい、見えないサービス残業が多いのでは?ということについて、もう少し深堀していきますが、その前にお伝えしたいことは、介護現場でもどのような事業所でもみられる退勤後に仕事をする・残業時間の端数を切り捨てる・勤務時間前に仕事をはじめるというサービス残業は違法です。原則、1日8時間、1週間に40時間を超える労働は、労働基準法第32条により禁止されています。また、法定労働時間を超えて仕事をさせる場合は、時間外・休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)を結ぶとともに割増賃金(残業代)を支払う必要があり、残業代を支払わないサービス残業は、労働基準法に違反します。
しかしながら、不払い残業が「なし」と回答した人は 75.0%となり、4人に1人の25%が不払い残業をしているという結果になっています。当該調査は、主に労働組合がある施設・事業所を対象としているため、労働組合のない施設・事業所では、この結果以上に不払い残業が横行している可能性があります。
参考:公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_cw_kekka.pdf
参考:厚生労働省 「毎月勤労統計調査 平成30年度分結果確報 第2表 月間実労働時間及び出勤日数」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r05/2301p/xls/2301c02p.xlsx
参考:全国労働組合総連合「介護労働実態調査 報告書」https://www.zenroren.gr.jp/jp/kurashi/data/2019/190424_02.pdf
なぜ、サービス残業が発生してしまうのか?
介護現場でサービス残業になりやすい業務は、下記の通りです。
勤務時間外の介護記録の記入
介護現場では、勤務時間ギリギリまで利用者のケアをして、勤務時間外に介護記録の入力や申し送りなどを行っていることが多いです。
勤務時間外のミーティング
ミーティングをする際に職員全員のシフトを調整することが難しく、勤務時間外にミーティングを実施することがあります。
勤務時間外の利用者やその家族への対応
介護職員は、退勤時間前に利用者やその家族からの相談や対応をすることでサービス残業になってしまうこともあります。
勤務時間外の勉強会
自主的に自宅などで勉強する場合はサービス残業になりませんが、勉強会の参加を義務付けている場合は、業務の一貫となるので残業代を支払われていないときはサービス残業になります。
職員向け残業を減らす働き方のポイント4選
サービス残業に悩んでいる方は、以下の対処法を試してみてください。
上司に相談する
サービス残業が常態化しているときは、上司に相談しましょう。
労働組合に相談する
サービス残業が改善されない場合は、労働組合に相談すると良いでしょう。労働組合とは、労働者が主体となって労働条件の維持や改善、経済的地位の向上を目指す組織のことです。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署に相談し、違法なサービス残業を行っていることが認められると、事業所への指導や是正勧告がなされます。
転職する
サービス残業に悩んでいる人は、転職するのも効果があります。本来であれば事業所側がサービス残業にならないようにする必要がありますが、サービス残業をして当たり前という空気がある施設は改善が難しいのも事実です。問題のある事業所でストレスを抱えながら働き続けるより、サービス残業がない施設を探して転職したほうが良いでしょう。
管理者向け残業を減らす現場改革の3つのポイント
残業を事前に申請するルールを作る
残業が増えてしまっている事業所の多くは、職員に残業の判断を委ねてしまっていることが少なくありません。職員も自分でコントロールができるため、残業へのハードルが低くなり、結果として残業が増えてしまうということが起こってしまいます。
そのため、残業を事前に申請するルールを設けると良いでしょう。残業が必要な場合は、いつ、どのくらいの時間、なぜ残業をするのかの管理者への申請と承認を義務付けます。
これにより、管理者への申請という以前よりもハードルを与えることで残業をしにくくする効果があるでしょう。
事業所全体のノー残業デーを設ける
残業できるという環境があるだけで、定時までに終わらなかった仕事を残業に回すということが起こるのではないでしょうか。そこで、導入すべきなのが「ノー残業デー」です。例えば週1回、残業をしてはいけない日を作ることで、仕事を定時までに終わらせようという効果が期待できます。
勤怠管理システムを導入による労働時間の可視化
勤怠管理システムを導入することで、労働時間が可視化できるため、業務改善をしやすくなります。リアルタイムで勤務集計をしてくれるので、勤怠状況を把握しやすいです。
「○○さんは、今月は10時間も残業しているから、業務内容を改善しよう」と職員全体の労働時間を意識して業務を行うことで、残業時間の長い職員への注意喚起に使うこともできます。
最後に
これまでサービス残業にしていた事業所の残業時間が可視化されると、残業代が正確に分かり支払額が増えてしまうと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、残業代の未払いは労働基準法の違反になるだけでなく、職員からのリークにより発覚した場合、社会的信用を失うことやより多くの残業代を請求されかねません。払うべき残業代を隠ぺいするのではなく、このような様々な方法を用いて残業を減らした働き方を考えましょう。